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ほんとうの優しさって?

〜 ひとり親世帯に寄り添うなら 〜

近年、ひとり親世帯のお客さまとの出会いが増えてきました。
中でも多いのが、母子家庭(シングルマザー)です。
日本では、各地さまざまな公的な支援制度がありますが、
それでもなお、シングルマザーの貧困率はかなり高いと言われます。

弊社が管理しているアパートにも、シングルマザーの方が何人かいます。
そのうちの一人、佐藤さんは高校生の娘さんと小さな赤ちゃんを一人で抱え、
水商売で生計を立てていましたが、家賃を滞納していた時期がありました。
ある日のこと、重なる滞納にしびれを切らした管理担当の女性社員が、
「もうだめです。今日こそ督促に行ってきます!」と息巻いて出かけようとしています。
心配になって、私もついていくことにしました。

佐藤さんの家に一歩入ると、部屋の中は荒れ放題。
高校生の娘さんは、いじめが重なって不登校になり、奥の部屋に引きこもっています。
担当の女性社員がまず取りだしたのは、
不登校でも進学できる、定時制や通信制などの高校のパンフレットでした。
「まだ大丈夫。行ける高校だってあるし、家賃も分割で払う方法もあるよ」と女性社員。
ついにアパートを追い出されるのか、と青ざめていた佐藤さんの頬が、
ふっと弛んだ瞬間でした。

その後、引きこもっていた娘さんは別の高校に進学し、
空いた時間にアルバイトをして家計を助け、今も同じアパートに暮らしています。

私たちはプロとして、母子家庭の方の入居をお手伝いする時には、
家賃と実際の収入のバランスを考えて、アドバイスするようにしています。
しかし時折、そのバランスを度外視して、広さや利便性などに一目惚れしたから、
「この家に、どうしても住みたい」という人もいます。

家賃10万円を超える素敵な家に住みたい─
その夢を叶えてあげるのは、優しさでしょうか?
収入面から考えると、すぐに家賃が払えなくなるのは火を見るよりも明らかでも?
ひとり親世帯に寄り添うなら、少しでも自立を助けられるような、
たとえば、あの高校のパンフレットをスッと差し出すような、
ほんとうの優しさを選びたいと思うのです。

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